カプコン元社員「以前は完成後にローカライズ」 いまや担当者は“開発チームの一員”に

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カプコンでは、ローカライズの位置づけが大きく変わってきた。匿名の元カプコン社員は、かつてはゲーム完成後にローカライズしていた一方、現在は担当者が“実際に開発チームの一員”になっていると証言している。さらにカプコンの公式資料を追うと、少なくとも2010年代前半には、Localization Director(ローカライズディレクター)を開発初期から制作へ組み込む体制が明文化されており、その仕組みは現在まで続いている。

発端となったのは、9月3日に公開されたThe Ringerの長編記事だ。同誌はカプコンの近年の好調ぶりを追うなかで、同社の開発体制の変化にも触れている。匿名の元社員によれば、入社当初はゲームが完成してからローカライズする形だったが、現在はローカライズ担当者が開発チームへ統合されているという。The Ringerはあわせて、2010年代を通じてローカライズ部門の役割が広がり、その流れのなかでローカライズディレクターという役職が形作られていったと伝えている。

この証言と符合するのが、カプコン自身の現行資料だ。同社の公式ページでは、従来は「日本語版の開発後」に進めていたローカライズを、現在はスタッフが初期段階から開発チームへ入り、開発と同時進行で進めていると説明している。背景には、ゲーム機性能の向上やオンライン対応、多言語化により、ローカライズの物量と重要性が年々高まってきた事情がある。そうした体制によって、グローバルでの同日発売を実現しているという。

興味深いのは、この変化が近年になって突然生まれた話ではない点だ。カプコンのAnnual Report 2014では、ローカライズディレクターは通常の翻訳者とは異なり、開発初期から各タイトルの開発チームに配属される役割だと説明されていた。そこでは、海外ユーザーとの文化差や、直訳では伝えきれないニュアンスを扱うだけでなく、演出や仕様についても積極的に意見を出す存在として位置づけられている。ローカライズが単なる翻訳工程ではなく、制作上の判断にも意見を出す役割として扱われていたことがわかる。

その後のカプコン側の発信では、この体制が実際にどのように運用されていたのかが、さらに具体的に語られている。2015年に『Monster Hunter 4 Ultimate』(日本語版名称:モンスターハンター4G)のローカライズについて紹介した公式ブログでは、以前はローカライズリードがローカライズチーム側に残る形だったのに対し、当時はローカライズディレクターがプロジェクト期間中、開発チームへ加わる形になっていたと説明されている。開発側の近くにいることで必要な情報を得やすくなり、潜在的な問題も起きる前に把握しやすくなるという。

2022年のカプコン公式インタビューでは、その距離の近さがさらに具体的に語られている。ローカライズディレクターはプロジェクト初期から参加し、自身のワークステーションを開発チームのいる場所へ移して、プロジェクト終了までそこで仕事をするという。やり取りする相手も、ディレクターやゲームデザイナー、ライター、プロデューサーなど多岐にわたる。検討対象もUIやテクスチャといった技術面だけでなく、キャラクター設定やステージ内容など文化面にまで及ぶ。インタビュー内では、ローカライズ部門そのものが「開発の一部」と説明されていた。

実際のタイトルでも、その関わりは翻訳にとどまらない。『バイオハザード7 レジデント イービル』についての2016年の開発者インタビューでは、ローカライズが企画・開発段階から始まっていたと説明されている。しかもチェック対象はシナリオだけではなく、声優の演技やモーションキャプチャーの動きにまで及んでいたという。アメリカを舞台にした作品としてのリアリティを保ちつつ、カプコンらしい世界観も損なわないため、ローカライズチームが国内外のスタッフをつなぐ橋渡し役を担っていたようだ。

『モンスターハンター:ワールド』でも同様の姿勢が確認できる。2017年の辻本良三氏インタビューでは、カルチャライズにも力を入れるため、社内のローカライズメンバーを開発チームへ加え、「より近い距離で一緒に開発」を進めていると説明されていた。単に各言語へ置き換えるのではなく、ニュアンスや文化差まで踏まえてゲーム体験を整える役割が、開発チームの内部に置かれていたことになる。

そして、この仕組みは過去の話で終わっていない。カプコンが現在募集しているローカライズディレクターの求人でも、同職はプロジェクトの最初から最後まで開発チームと直接仕事をする役割だと明記されている。プロジェクト管理とクリエイティブの両面を担い、翻訳、音声収録、品質管理、文化的妥当性の確保まで含めて関わる職務だ。現在の採用要件にも、ローカライズディレクターが開発チームの一員としてプロジェクト全体に関わる体制が表れている。

The Ringerで元社員が語った「完成後にローカライズしていた」時代から、現在の「開発チームの一員」へ。カプコンのローカライズは、単なる翻訳工程ではなく、開発初期からゲーム制作に関わる仕事へと位置づけを変えてきた。

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