『moon』を手がけた木村祥朗氏は、ゲームそのものを題材にした物語が、あのエンディングですでに完結しているため、『moon2』のような直接的な続編は作れないと考えてきた。
しかし、『moon』で描いた世界の“その先”まで考えることをやめていたわけではない。木村氏は『moon2』を求められるたび、続編はあり得ないと答えながらも、直接的な『moon2』とは別の形で、あの世界には続きがあると考え続けていたという。
そのきっかけとなったのが、『moon』のエンディングに登場する「『moon』発売中止」のチラシだった。この発売中止は現実のゲームソフトではなく、作中のゲームショップに貼られたチラシで示されるゲーム内の『moon』を指している。
木村氏はこの場面から、発売されなかったゲームのビルド内に残る住人はどうなるのか、プレイヤーが訪れなくなった世界で何をしているのかを想像した。『チュウリップ』を制作していた頃には、すでにプレイヤー不在の世界で過ごす『moon』の住人たちについて考えていたという。
『moon2』ではなく、別の月のRPG『ミカヅキ』へ
この長年の疑問は、『ストレイチルドレン』に登場する幻のRPG『ミカヅキ』の設定へつながった。
『ストレイチルドレン』は、父親が1997年に作った『ミカヅキ』へ迷い込んだ少年が、崩壊したゲーム世界で行方不明の父親を捜すRPGだ。
木村氏によると、『ミカヅキ』は主人公の父親が発売できないまま放置したゲームとして設定されている。内部のキャラクターたちはプレイヤーが訪れない世界に取り残され、世界そのものも滅亡寸前となり、ぼろぼろに崩れて消えかけている。
ただし、『ミカヅキ』は『moon』本編の世界がその後に崩壊した姿ではない。『moon』によく似てはいるものの、同じ世界を舞台にした続編ではなく、別のパラレルな月のゲームだ。
木村氏は、『ストレイチルドレン』が制作の途中で『moon2』になってしまうなら、作るのをやめるつもりだったという。それでも、直接的な続編を作らないことと、『moon』から生まれた疑問に向き合うことは両立できると考えるようになった。
長年『moon2』を作らないことにこだわってきた木村氏は、最終的に「『moon2』を作りたくないからといって、『moon』から逃げなくてもよかった」と振り返っている。



