『モンスターハンターワイルズ:アセンダンス』で導入される新要素「ブーストブレイサー」について、平岡拓朗ディレクターがその設計思想を明かした。目指したのは、使い込むほどに戦いの幅と効率が広がる一方で、使いこなせなければ立ち行かなくなるような“必須ギミック”にはしないことだ。とくにマスターランク帯において、「ブーストブレイサー前提」の難度設計は避ける姿勢を明確にしている。
平岡氏がメディア合同インタビューで語ったところによれば、ブーストブレイサーの発想の出発点は、『モンスターハンター』らしい“好機の作り方”をもう一段広げたい、という考えにあったという。従来のシリーズでは、モンスターが自ら見せる隙を突くのはもちろん、罠や閃光弾、フィールドギミックなどを駆使して、ハンター側から攻めの起点を生み出すことも重要な駆け引きとして機能してきた。そこにさらに別軸の「チャンスメーカー」を加えるものとして構想されたのが、ブーストブレイサーだった。
興味深いのは、その運用に“唯一の正解”を設けていない点だ。慣れたプレイヤーであれば、アクション性能が向上するブースト状態をできるだけ維持しながら立ち回ることで、高い効率を引き出せる余地がある。だが一方で、まだ扱いに慣れていないプレイヤーがゲージを温存し、モンスターのダウン時のような明確な好機にまとめて使う戦い方についても、平岡氏は「それも正しいと思いますし、全然肯定したいです」と受け止める。上達に応じて運用の最適化はできるが、それ以外の使い方を選んだからといって不利益を強く意識させる設計にはしたくない、というわけだ。
つまりブーストブレイサーは、効率を追い求める上級者に対しては明確なリターンを用意しつつ、すべてのプレイヤーに同じ精度を要求する仕組みではない。最適解を知り、それを実戦で安定して回せること自体を熟練の強みとして残しながらも、それを前提条件にしてしまえば、システムは途端に窮屈になる。平岡氏の言葉からは、そうしたバランスへの強い意識がうかがえる。
実際、「ブーストブレイサーを使いこなせなければモンスターを倒せないような調整なのか」という問いに対しても、平岡氏は明確に否定している。あくまで本作の戦闘を支えるベースは『ワイルズ』本編のアクションにあり、ブーストブレイサーはゲージが溜まったときに新たな選択肢が立ち上がる“アクセント”として位置づけられている。常時ブースト状態を維持し続けることが理想であり、そこから外れると苦しくなる――そんなゲームにはしたくないという考えだ。
そのスタンスは、マスターランクに対する説明でもよりはっきり示された。平岡氏は、「これを使いこなさないとマスターランクのモンスターは全部きつい、みたいなものには絶対にしてはいけない」と語っており、新要素を軸にプレイヤーをふるい落とすのではなく、あくまで選択肢と表現の幅を広げるためのシステムとして機能させる意図を強調した。
もっとも、それはマスターランクの手応えが控えめになる、という話ではない。『ワイルズ』に登場した既存モンスターのMR版は、本編の挙動をそのまま流用して数値だけを引き上げたものにはならないという。能力値の強化に加えて、新アクションの追加や既存技の変化も盛り込み、それぞれを独立した「マスターランクバージョン」として作り込んでいるとのこと。単純なインフレではなく、攻略の再構築を促す再設計が行われるようだ。
ブーストブレイサーの設計思想から見えてくるのは、『モンスターハンターワイルズ:アセンダンス』が目指す難度のかけ方だ。新要素を使えばより深く、より強く戦える。しかし、それを使いこなせない者を切り捨てる方向には振らない。プレイヤーの習熟をきちんと報いる一方で、遊び方の幅も守る。その両立を狙う姿勢は、アクションゲームに新システムを加えるうえで、かなり慎重かつ誠実なアプローチと言えそうだ。




