『ARC Raiders』『THE FINALS』を手がけるEmbark Studiosが、両作品のアンチチート対策を扱った講演で、講演当日に1万5000人をBANしたことを明らかにした。BAN数の作品別内訳は示されていない。同社は講演時点で、両作品から1日約200億件のテレメトリイベントを収集しており、その約5%をアンチチート用途に使用しているという。Embarkでは、チートそのものを阻止する対策だけに頼るのではなく、プレイヤーの行動データからチーターを識別することへ、アンチチート対策の重心を移している。
「止める」だけでは続かない――チーターを識別する戦いへ
Embark StudiosのシニアソフトウェアエンジニアTom van Dijck氏によると、同社は2022年にアンチチートチームを設置した。当初はEasy Anti-Cheatに加え、ゲーム解析を難しくするアンチタンパーや、Unreal Engine由来の手掛かりを減らす改変など、クライアント側でチート開発を難しくする対策を進めていた。
しかし『THE FINALS』初期には、Embarkが対策を講じてからチート側に突破されるまでの時間が次第に短くなったという。ゲームを壊さずに施せる変更には限界がある一方、チート開発側は変更された箇所を再び調べることで対応できるためだ。
van Dijck氏は、このいたちごっこを従来通り続けるなら「数千人のエンジニア」が必要になると説明した。そこでEmbarkが重視するようになったのが、チートそのものを止め続けることだけでなく、プレイヤーの行動データからチーターを識別することだった。
講演時点で『ARC Raiders』『THE FINALS』から収集しているテレメトリイベントは1日約200億件で、その約5%をアンチチート用途に使っているという。Embarkは、プレイヤーの入力とゲーム内で実際に起きた挙動を照合するなどして、不自然なパターンを探している。
講演では具体例として、マウスの入力信号からゲーム内のカメラが動くまでを記録し、対応するユーザー入力がないにもかかわらずカメラだけが回転するといった異常を検出する手法が紹介された。この手法では、チートプログラムそのものではなく、プレイヤー側に現れる不自然な挙動を手掛かりにする。
この転換は人材面にも及んでいる。Embarkは採用の軸をデータサイエンティストへ大きく移しており、van Dijck氏によると、現在はプログラムのリバースエンジニアリングよりもデータ分析にはるかに多くの労力を割いているという。
van Dijck氏は、こうした取り組みについて現在も多くを学んでいる段階だとしながらも、多数のチーターを識別できていると説明した。その具体例として、講演当日に1万5000人をBANしたことを明かした。
現在の『ARC Raiders』はDenuvoとデータ分析を組み合わせる
一方、現在の『ARC Raiders』を見ると、Embarkがデータ分析だけにアンチチートを一本化したわけではないことも分かる。
同作では7月7日のアップデートまでにDenuvo Anti-Cheatの全プレイヤーへの適用が完了した。Embarkは、ハードウェアやソフトウェアを利用した検知に加え、機械学習による入力テレメトリ分析なども継続的に改善していると説明している。
講演で語られたデータによるチーター識別は、従来の防御を置き換える単独の仕組みではない。現在の『ARC Raiders』では、クライアント側を含む複数の検知手段と組み合わせて運用されている。
アンチチートの改善はその後も続いている。Embarkは8月18日の公式更新で、AnybrainとDenuvo Anti-Cheatに複数の改善を加え、最近普及したチートソフトを使用していた多数のアカウントに対し、迅速に措置を取ることができたと報告した。
出典:Inven Global / ARC Raiders公式(Live Update 1.36.0) / ARC Raiders公式(Live Update 1.42.0)




