『ドラゴンクエストVII Reimagined』では、4.5頭身のキャラクターが持つ「はやぶさの剣」や「まじんのかなづち」の質感まで、装備ごとに細かく作り分けられていた。町やフィールドでも、カメラを少し回すと次の入口が見えるよう、建物の高さや配置が整えられていたという。
電ファミニコゲーマーが2026年6月4日に公開したインタビューでは、スクウェア・エニックスの八木正人氏と、ヘキサドライブの浅野達郎氏が本作のアートディレクションについて語っている。聞き手はヨコオタロウ氏と藤坂公彦氏。
すべては「人形1体」から始まった
浅野氏によると、プロジェクトのスタートアップは「人形」からだった。人形が1体ある状態から、昔のファンも新しいファンも納得する『ドラゴンクエストVII』を作る。それが出発点になったという。
物量の多いゲームでチーム全体の品質を安定させるには、作り手も受け手も同じものを想像できる軸が必要になる。そこで掲げられたテーマが「ジオラマ・ミニチュア」だった。派手にしすぎるとジオラマ感が消え、ただのゲームの体験になってしまうと浅野氏は話している。
八木氏はそのルックを最初に見たとき、「これまでにないスタイルだけどめっちゃ『ドラゴンクエスト』じゃん!」と思ったという。
白黒化、4階調化、ブラーで見え方を検証していた
浅野氏がトンマナ管理で大事にしていたのは、作ったものを「白黒化する」「4階調化する」「ブラーをかける」という3つの確認だった。
4階調化すると、色数を少なくして見たときに単調になっていないかがわかる。ブラーをかけると、質感が死んでいないかがわかる。白黒化、4階調化、ブラーは、見え方や質感を確かめるための手段として使われていた。
ヨコオ氏は、宣伝ではなく、どうやって『リイマジンド』のアートディレクションが行われたのかを知りたくて取材に来たと述べていた。話を聞くうちに、最初はすごいと思っていたが途中から若干怖くなり、手段が真っ当すぎて逆に「狂気」を感じるとも語っている。
浅野氏は30代半ばまでメガネ屋で働いており、仮説検証するクセがあると話している。人形というコンセプトを与えられた時点で、検証は始まっていたという。
4.5頭身のキャラクターが持つ装備を、ひとつずつ調整していた
検証の話は、装備品でとくに徹底されている。浅野氏は、本当に末端までがっちりやったのは装備品だったと語る。
本作のゲーム内モデルはだいたい4.5頭身。このサイズのキャラクターが、質感のある「はやぶさの剣」や「まじんのかなづち」を持つことは、まったく新しい体験だったと浅野氏は説明している。
浅野氏は、『ドラゴンクエスト』でゴールドを貯めて新しい装備を手に入れたときのうれしさにも触れている。棒切れが剣になり、きづちがウォーハンマーになるとき、「これで殴ったら痛そうだな」という体験や質感を伝えたかったという。
そのため、「ウォーハンマー」と「まじんのかなづち」のように見た目の近い武器でも、持ち手の太さ、長さ、武器自体の大きさ、質感はパーツごとに変えている。キャラクターと装備の大きさを合わせるだけではなく、装備を替えたときの見え方まで作り込んでいた。
「浮いている」ことを拒絶し、1フレームの埋まりまで使っていた
浅野氏が開発中に拒絶したのは、埋まっていることよりも「浮いている」ことだったという。
一方で、モンスターが地面に跳ねる場面では、意図的に1フレームだけ地面に埋まるようにしたことがある。地面に接触して縮まって跳ねているように見せるためだ。
主要キャラクターも、ゲームが出来てくるにつれてより良くしたくなり、最後までレタッチしていたという。イベント、カットシーン、モーションごとに、場合によっては1フレームずつ調整していた。
フォトグラメトリを使いながら、スキャンテクスチャは使っていない
本作は、実物の人形をフォトグラメトリして制作したキャラクターモデルを軸にしている。
ただし浅野氏は、スキャンしたテクスチャは使っていないと語っている。スクウェア・エニックス側でフォトグラメトリを撮影し、ヘキサドライブにハイモデルが届き、そこから先はすべて手作業で作り上げていったという。主人公の服の質感なども置き換えている。
藤坂氏は、『リイマジンド』について、フォトグラメトリの良さを活かしつつ、管理可能な3Dとして再構築していると述べている。
フィッシュベルを基準に、走るときの視界やカメラも整えていた
フィールドや町を走る体験の基礎は、最初の村フィッシュベルで作られた。浅野氏は、俯瞰の状態で走っているときにカメラに何も映っていないと疲れると語っている。
そこで、走っていたら町の人がカメラに入ってくる、話しかけようと移動したら階段が見えてくる、といったものを1スケールの基準にしたという。
さらに、カメラを少し回すと次の入口が見え、極端に言えばカメラを回さなくてもある程度は走れるように、最初から設計していた。テンポ感と手触りがプレイヤーのストレスに関わる部分だと判断し、90度回さないと見えない場所は作らないよう、建物の高さや配置も調整していた。
フィールドについても、広大なフィールドを走り回るのを最小にし、「レベル上げはダンジョンでやろう」と割り切ったうえで、「拠点間の移動」と位置づけていたという。



