『シュタインズ・ゲート リブート』で牧瀬紅莉栖を再演した今井麻美さんが、約17年ぶりの全編新録で向き合ったのは、かつての演技の再現ではなく、長年演じ続けたからこそ深まった紅莉栖への理解だった。
「週刊ファミ通 2026年9月3日号 No.1960」に掲載されたインタビューで今井さんは、オリジナル版『シュタインズ・ゲート』の収録当時、この作品がここまで長く愛される存在になるとは思っていなかったと振り返っている。もともとはコアなゲームファンに向けた作品だったが、いまでは世代を超えて知られるタイトルになった。その17年間の中で、今井さん自身が牧瀬紅莉栖を演じる感覚も変化していった。
当時の収録では、今井さんの手元にあったのは主に紅莉栖が登場する場面の台本で、物語全体の流れまで把握した状態ではなかったという。初めてシナリオを読んだ際の印象は「とにかく難しい」。天才少女である紅莉栖が口にする理論や専門用語を、理解したうえで話しているように演じなければならないことに、大きなプレッシャーがあったと明かしている。
その象徴として挙げたのが、序盤のタイムマシン理論の講義シーンだ。今井さんは当時、専門用語の意味を調べながら収録に臨み、“知ったかぶりをして必死に演じていた”と振り返る。一方で、ゲームではプレイヤーが自分のペースで読み進めるからこそ、聞きづらかったり間延びしたりすれば飛ばされてしまうかもしれないという思いも強かったという。だからこそ、あの場面には「絶対にプレイヤーに飛ばされたくない」という意識で向き合っていた。
今回の『シュタインズ・ゲート リブート』で、特に変化を感じたのもその講義シーンだった。アニメ版などを通じて紅莉栖というキャラクターへの理解を深めたことで、今井さんの中では、紅莉栖が天才科学者として論理を理解したうえで説明しているリアル感を、以前より具体的に表現できるようになっていたという。だから今回は、難解な理論をただ説明するのではなく、天才科学者が自分の理解の上で淀みなく説明している感触を芝居に乗せることができたようだ。「本当に理解して講義している」空気感を目指せたという言葉は、17年越しの新録で生まれた変化をよく示している。
新録にあたっては、どの時点の紅莉栖を基準に演じるかでも悩みがあったという。オリジナル版の演技をそのまま再現するのか、それともアニメ版などを経た後の紅莉栖を土台にするのか。今井さんは主要なシーンを見直したうえで、最終的には後者を選択した。少し大人びた紅莉栖をベースに演じる判断だった。『シュタインズ・ゲート リブート』では、オリジナル版のキャラクターデザインを手がけたhuke氏による新たなデザインも採用されており、今井さん自身も17年の経験を踏まえた新たな感覚で収録に臨んだ。
収録環境の違いも、今回の新録で生まれた変化のひとつだ。オリジナル版では他キャストの演技を知らないまま一人ずつ収録していたが、今回は17年間ともに作品を作ってきた積み重ねがある。相手の声や芝居が自然に頭に浮かぶ状態で収録できたことで、岡部倫太郎との掛け合いについては「異次元レベルで噛み合っている」と感じたと語っている。
今井さんによれば、『シュタインズ・ゲート リブート』はオリジナル版とも『シュタインズ・ゲート エリート』とも異なる作品になっているという。物語を知っているファンにとっても、今回は“同じ物語の録り直し”ではなく、17年間で培われたキャスト陣の理解が反映されたリブートになりそうだ。
出典:『週刊ファミ通 2026年9月3日号 No.1960』(2026年8月20日発売)



