ゲーム開発で先にあるのは、物語そのものではなく、最終的に得られる体験や感情。『パラノマサイト』シリーズでディレクター・脚本を担当する石山貴也氏は、週刊ファミ通のインタビューで、物語を「開発において最下流の工程」だと説明している。遊び終えた人がどういう感想を持つかを考え、そこからキャラクター設定や舞台設定、トリック、事件を組み立てていくという。
感想を想定して、物語を組み立てる
石山氏が物語を作るとき、先に思い描くのは物語そのものではない。遊び終えた人がどういう感想を持つかだ。「こう思わせたい」「こう思わせるものにしたい」。そこからキャラクターの設定や舞台設定、トリック、事件を考えていく。
たとえば「今回は○○だから感動した」「○と○の関係がよかった」といった感想が出るところを想定し、そこに合わせてキャラクターの設定や舞台設定、トリック、事件を組み立てる。何が起きるかを先に並べるのではなく、遊び終えた人にどう感じてもらうかから逆算していく。
石山氏は、ゲームの物語作りを「開発において最下流の工程」だと話している。先にあるのは、最終的に得られる体験や感情であり、その達成のためにゲームシステムや世界設定がある。物語は、それらをつなぐものとしてある。物語自体もおもしろいに越したことはない。そのうえで、言葉遣いやキャラクターの反応も含め、プレイヤーがモチベーションを保てるよう思想を込めて書いている。
情報の出し方で、驚きや推理をコントロールしやすくする
プレイヤーがある情報を知ったとき、どう思うのか。どこが気になるのか。石山氏は、ミステリーではそうした思考に寄り添いながら情報を出していくことが重要だと話す。
そのため、プレイヤーが気にしそうな点があれば、キャラクターがその場で同意したり、回答したりするようにしているという。そうすることで、驚かせるにしても、推理させるにしても、ミスリードにするにしても、コントロールしやすくなる。
インタビューでは、『パラノマサイト』両作のメタ的な仕掛けにも話が及んでいる。石山氏は、メタ系のネタはコンセプトではなく手段だと説明。海外でも話題になりやすく、自身も好きだったため今回はこれでいこうと考え、驚いてもらうために物語で誘導していったと語っている。
プロットは、くり返し遊びながら変えていく
最初に作ったプロット通りに進めても、改めてプレイすると中だるみするところが出てくるという。石山氏は、自分で何度もくり返し遊び、テンポが悪ければ事件のタイミングを早めたり、後から出す予定だった人物を前倒しで登場させたりして調整していく。
こうしたやり方は、『探偵・神宮寺三郎 奇譚』のころから変わっていないと話す。一方で、『パラノマサイト』くらいの規模になると、このやり方でできるのは限界かもしれないという感覚もあるという。
『伊勢人魚物語』では、最初に完璧なプロットを作って予定通りに進めようとしたが、うまくいかなかったと振り返る。喫茶店で書いてみたり、クリエイターが書いた本のノウハウを試したりもしたが、結局は泥臭く作るしかなかったという。ある意味で『パラノマサイト』は、この作り方しかないと吹っ切れた作品でもあったと語っている。
アドベンチャーゲームだから、仕掛けを考えられる
石山氏がアドベンチャーゲームの魅力として挙げるのは、「プレイした全員がシナリオを読んでくれること」だ。
ほかのジャンルでは、シナリオは意外と読まれていないのではないか。石山氏はそう見ている。その点、アドベンチャーゲームなら、プレイヤーがシナリオを読んでいることを前提として仕掛けを考えられる。
ゲームの感想が、そのままシナリオの感想になることも大きい。ファンがシナリオについて反応し、感想を語ってくれる。遊び終えた人の感想を想定して作るという最初の話は、ここにもつながっている。
出典
- 週刊ファミ通 2026年7月2・9日合併号 No.1952「特集 アドベンチャーの現在地:FILE.2 創り手たちの証言 01 スクウェア・エニックス 石山貴也」



