『428』が“なかなか終わらない”理由。イシイジロウ氏が語る「終わりかな?」の先

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『428 〜封鎖された渋谷で〜』や『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』が“なかなか終わらない”理由について、イシイジロウ氏は映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の影響を語った。

週刊ファミ通 2026年7月2・9日合併号 No.1952の特集「アドベンチャーゲームの現在地」に掲載されたインタビューで、同氏は小学5年生のときに同作を観た衝撃を振り返っている。都市帝国を倒して終わると思った後に超弩級戦艦が現れ、物語はさらに続く。その“物語が終わらない”感覚が、自身の作品にも影響しているという。

『428』や『金八先生』が“なかなか終わらない”理由

イシイ氏がもっとも影響を受けた物語として挙げたのは、1978年公開の映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』だった。小学5年生のときに観た同作で、それまで触れてきた作品にはなかった衝撃を受けたという。

同氏にとって、主人公は死なない存在だった。『マジンガーZ対暗黒大将軍』でも、ボロボロになったマジンガーZはグレートマジンガーに助けられる。ところが『さらば宇宙戦艦ヤマト』では、主人公やヒロインを含めてほぼ全滅する。イシイ氏はこの展開を、いい意味で裏切られた体験だったと振り返り、「自分の予想以上のものを見せられて、頭を殴られた感覚」と表現している。

ただ、同氏が語る衝撃は結末だけではない。同作は2時間半ぐらいある長い映画だった。通常はだいたい90分ぐらいで終わるものだが、この映画は終わらない。都市帝国を倒した時点で、イシイ氏はもう終わると思ったという。ほかの観客もそう感じていたようで、ひとり帰っていったほどだった。

そこで今後のヤマトの冒険への布石が打たれていくのかと思ったところに、超弩級戦艦が現れる。終わりに見えた地点を越えて、登場人物たちはさらに犠牲になり、追い詰められていく。

イシイ氏は、この“物語が終わらない”感覚と、そこから次々に犠牲になって追い詰められていく構成が自身に影響していると語っている。『428 〜封鎖された渋谷で〜』も『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』も、なかなか終わらないのはそのためだという。

現在も、同氏は「終わったと思った後に何が出てくるのか」にこだわっている。『文豪とアルケミスト』の舞台版でも、文豪たちの全滅の後にどうするのかを描いてもらっているとし、「終わりかな?」と思った後に、もう3段階ぐらい事件が起こってほしいと語っている。

「ゲームじゃないと楽しめない物語」とは何か

イシイ氏は、アドベンチャーゲームを作るうえで、物語そのものがゲーム的であることを重視している。テキストアドベンチャーゲームは「物語でゲームをする」ものであり、ジャンプのような肉体的な操作で遊ばせるわけではない。だからこそ、ゲーム性は物語やテキストの中になければならない。

同氏は、ストーリーがゲーム性を持っていることが、アドベンチャーゲームでもっとも重要だと説明している。そこで本質として挙げているのが、「ゲームじゃないと楽しめない物語」だ。

ゲーム性を持ったシナリオの条件として、同氏は、SF的にわかりやすいループではなく、物語の文法の中で約束されていないループを挙げている。ゲームを終えてもう一度始めたあと、そこからまた物語が進んでいく。イシイ氏は、そこにマルチ構造があると説明している。

選択によるマルチストーリーも、そのひとつだ。ヒロインが死ぬ物語と生きる物語が同時に存在することは、映画では両立しにくい。だがゲームであれば、死ぬことと生きることを同時に経験できる。イシイ氏は、それによって物語の深さが大きく変わると語っている。

『428 〜封鎖された渋谷で〜』のように、他人の物語へ介入していく作りも、同じ考え方の延長にある。映画でもそれに近い表現はできるが、複数の人物の物語をパズルのように組み合わせていく体験はゲームにしかできない。ゲームの物語では、最初からひとつの答えに絞り込まず、複数の可能性を残しておくことがゲーム性につながる。

一方で、ゲーム以外の物語では、そのときしか感じられない一本の物語を作る必要がある。ゲームでは複数の可能性を残せるが、ゲーム以外では一本の物語として作る必要があるためだ。

『428 〜封鎖された渋谷で〜』で、できるだけ“知っているストーリー感”を置きにいったのも、その違いがあるためだ。ゲームでは未知のものが不利になる可能性がある。イシイ氏は、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』や『かまいたちの夜』を挙げながら、その感覚を説明している。

出典

  • 週刊ファミ通 2026年7月2・9日合併号 No.1952 特集「アドベンチャーゲームの現在地」内「創り手たちの証言 02 イシイジロウ」インタビュー
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